ファブシステム研究会

経済産業省 平成27年度 戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)に採択されました。

補助事業計画名「マイクロ波励起プラズマを用いた低ダメージ薄膜形成用ミニマル装置の開発」

本事業研究開発実施機関(共同申請者) 東北大学、誠南工業株式会社、株式会社コーテック

 本事業計画はCMOS回路のさらなる微細化・高性能化に必須となるシリコン窒化膜形成用プラズマCVD技術をミニマル化したプロセス装置に実現することです。(図1参照)そのために、東北大学で長年培ってきたマイクロ波励起高密度プラズマプロセス技術を基本として開発を行います。本技術は反応性の高い活性種を自在に励起させ、低温・低ダメージでのプロセスが可能であることを特長としており、メガファブにおける大口径ウェーハを用いた半導体生産工程においてはすでに導入されている技術であるこの技術をミニマルファブシステムに導入することが強く望まれる。

ファブシステム研究会説明図

図1:プラズマCVD装置のミニファブ化とその波及効果

ミニマルファブの意義

ミニマルファブシステムにおける特徴の一つは、メガファブシステムでは柔軟に対応できない小回りの効いたデバイスの生産および生産効率の向上であり、低コスト、省スペース、更に省エネ等、様々なメリットが期待できる。近年、ミニマルファブプロセスを用い、シリコン半導体ICの基本回路であるCMOSの作成に成功している(図2(a)参照)。CMOS回路を実現することで、アナログやディジタルの様々な回路を低消費電力で形成可能となる。これにより、消費者ニーズに応じた多種多様な半導体IC、例えば車載用マイコン、携帯電話用LSI、家電製品用システムLSI等の多品種少量生産に対応が可能となり、ミニマルファブシステムの市場拡大に大きく寄与することができる。

CMOS製造プロセスにおける微細化・高性能化技術導入の必要性

ミニマルファブで現在実現しているCMOS回路のデバイス寸法は1μm程度と、メガファブで大口径ウェーハを用いて作成される寸法0.1μm以下の微細デバイスと比較するとその寸法は大きい。よく知られている通り、半導体デバイスはデバイス寸法を微細化することでその低消費電力化・高速化が可能となるため、今までの半導体ICの性能向上はデバイス寸法の微細化と共に進展してきた。よって、ミニマルプロセスにおいてもデバイス寸法の微細化を行うことが、今後のミニマルファブシステムの発展において極めて重要である。図(b)に示すようなサブミクロン微細化対応・高性能化フルミニマルCMOSを実現させるには、大口径ウェーハプロセスで培ってきたいくつかの技術をミニマル化する必要がある。

CMOS

図3:(a)現在のフルミニマルCMOSと(b)サブミクロン微細化対応・高性能化フルミニマルCMOS

プラズマCVD装置開発の必要性

高品質シリコン窒化膜の成膜形成を実現するには、成膜材料ガスをプラズマ化し活性化させるプラズマCVDを用いることが有効であり、大口径ウェーハプロセスにおいてもプラズマCVD技術、もしくはプラズマALD(原子層堆積法)が用いられ、現在でも膜質向上の研究開発が続いている。ミニマルファブ装置においても、高品質な薄膜形成が可能なプラズマCVD装置の実現が強く求められる。
プラズマCVDにおいて高品質な薄膜を形成するには、(1)プラズマを高密度化して活性なラジカルを大量に発生させるとともに、(2)過度の高エネルギーイオン照射による基板へのダメージを抑制する必要がある。まず、プラズマを高密度化させるには、プラズマ励起に用いる電力の周波数が高いマイクロ波を用いることが有効である。現在、ミニマルファブシステムにおいてシリコン酸化膜を形成するプラズマCVDシステムが実現しているが、マイクロ波は採用せず、13.56MHzの励起電力を用いた誘導結合型プラズマ源である。よって、ミニマルファブシステムにおいて、マイクロ波励起プラズマを用いたプラズマCVDシステムを実現させることは重要である。基板へのダメージを抑制することに関しては、大口径ウェーハ用のプラズマプロセス源において現在でも重要な開発テーマとなっている課題である。

磁場閉じ込め型プラズマCVD装置開発の意義

高密度プラズマをミニマルシステムで実現するには、大口径ウェーハ用装置での開発とは異なる難しさがある。すなわち、プラズマはそのサイズが小さいと、処理室(チャンバ)の壁が近いため壁への拡散でプラズマ密度が減少しやすく、高密度なプラズマを維持することが困難となる。共同申請者である東北大学 後藤先生は博士課程においてプラズマ生成・診断技術(電子サイクロトロン共鳴(ECR)を用いたミラー磁場プラズマ)を研究し、その後東北大学においてマイクロ波励起プラズマを用いたシリコン半導体製造プロセス技術に携わってきた。そして上記のような状況に鑑み、ミラー磁場ECRプラズマを用いた新たなプラズマCVD技術を着想し、最近特許出願を行った。本研究開発により、高密度かつ低ダメージな小型プラズマ源を開発し、ミニマルファブシステムに対応させた新たな磁場閉じ込め型マイクロ波励起プラズマCVD技術を開発することで、ミニマルプロセスによる高性能半導体IC製造技術の確立に大きく寄与できる。